母親に共感してもらえなかった記憶を癒す〜年齢退行療法

年齢退行療法(インナーチャイルドセラピー)は催眠状態で、幼少期の記憶に遡り、その時の感情を癒していく、そして植え付けてしまったネガティブな観念を手放すというセラピーです。しかし「癒す」と言われても、なぜ過去の記憶を思い出すことで癒されるのか、「手放す」ってどうやって?など、色々疑問が湧いてきますよね。

そこで、具体的な例として私自身のセッションをお話ししたいと思います。

私は両親との関係も良好で確執などは抱えていないので、特にテーマは決めないで「今自分に必要な子供の頃の記憶」に遡ると決めて始めました。

小さな自分は怒っていた

3、4歳の小さな女の子が見えました。緑色のセーターを着ています。そして不機嫌そうな顔をしていました。怒っています。なぜ怒っているかというと、お兄ちゃんのお下がりのセーターを着せられているからです。もっと可愛い女の子らしい服を着たいと不満を感じているのです。

ちなみに、これらの状況や感情はセラピストさんの質問に答えることによって、だんだんと自分で分かってきます。

その気持ちを誰に伝えたい?と聞かれ、小さい私は「お母さん」と答えました。そこで、母親に気持ちを伝えるのですが、母の返答は「お兄ちゃんのがあるんだから、それでいいでしょ。我慢して」といった感じのものでした。当然、小さい私の気持ちは収まりません。何度か似たようなやり取りが繰り返され、埒があかなくなったところで、セラピストさんからお母さんの気持ちになってみるという提案がされました。

人格交代

これは、母親の人格に入り込み、彼女の本当の気持ちを感じていくというものです。よく言われる、相手の気持ちになって・・・という意味ではなく、その時のその人物の意識と一体化して実感として体験していくものです。

母の人格に入り込みました。母は娘の訴えに対して、「わがままを許しては、この子のためにならない」などと主張して、頑として譲りません。しかし、セラピストさんが根気よく本当の気持ちを聞いていくと、母自身が子どもの頃にとても我慢を強いられてきたことがわかってきました。そこで、その辛かった気持ちを母の父親に伝え、謝罪の言葉を聞くことで、気持ちが軟化し、我が子の気持ちにも共感ができるようになりました。

再び、小さい私の人格に戻り、母に気持ちを伝えると、「そうだね、もっと可愛い服が着たいよね」と共感してくれ、その言葉にとても満足しました。そして、十分に言いたいことを言って、してもらいたいことをやってもらって、気が済んだところで終了となりました。

本当に欲しかったのは共感

以上が私自身のインナーチャイルドセラピーです。さて、この時の記憶で癒しが必要だったのは、可愛い服が着たいという気持ちに共感してもらえなかった怒りと悲しみです。この二つの感情は、共感してもらえなかった過去を共感してもらった過去にすることによって癒されたのです。

さらに、この時、「わがままを言うと愛されない。権力者(強者)に対して自分の気持ちを言っても無駄、聞き入れてもらえない。」という観念と制限を自ら植え付けてしまっていました。それも、新しい記憶を付け加えることで、わがままを言ってもいいんだ、感じたことを言ってもいいんだ、と自分に許可を出すことができるようになったのです。

とても些細な出来事ですが、幼少期の経験は時に、大人になってからの人生に地味に長く影響を与えていることがあります。〇〇恐怖症といったわかりやすいものだけでなく、ちょっと苦手なこと、理由のわからない不安もこんな些細なことが原因かもしれません。

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